艶やかな、だが心の伴わない笑顔で、では、なんてコージに背を向ける紫信。

鳩が豆鉄砲を食らったように、唖然とした顔で紫信を見送るコージ。

あ。

コレ、ダメなヤツだ。
本っ格的に相手にされてないヤツだ。

モーションをモーションだとわかっていながら素知らぬ顔で躱し続けて飽きるのを待ち、角を立てずにまるっとなかったコトにする高等スキルを使ってやがる。

って、もはやなんかの防御系最終形態じゃねーの、このコ!?


「ちょ、待てよ」


ハイ、キ○タク発動。

コージは紫信を追って壁ドンならぬ本棚ドンを再び繰り出し、彼女の進路と退路を同時に塞いだ。

これっぽっちも飽きてねェよ。
なかったコトにもさせねェよ?


「のらりくらりと逃げてばっかいねェで、いい加減ちゃんと俺を見ろよ」


「まぁ、お戯れを」


「お戯れなんかじゃねーよ。
俺は本気で君が欲しいンだ」


スイーツ(笑)あるあるな、だが実際リアルで聞くと失笑もんのセリフを、コージはキリリとした真顔で吐いた。

こりゃ言ったほうも失笑もんだ。
てか恥ず死ねる。

だが、ココは真顔で我慢だろ。

だって彼女の顔からも、張りついていた愛想笑いが消えている。

真摯に俺を見上げている。

キタコレ。
もうひと押しで…