花京院家の愛玩人形


玄関からの訪問ではないが、背の高い、襟首までキチンとボタンを留めた白いシャツとチャコールグレーのチノパンという多少カジュアルな格好のこの男は、きっとお客様。


「お履物はこの上に。
それから、コチラへどうぞ」


少女は手近にあった編み物雑誌を差し出した後、木製のアンティークなテーブルセットに男を招いた。


「すぐにお茶をお持ちしますわね」


ワンピースの裾を翻して背を向けた少女の細い手首を…


「待って。
そーゆーの、イイから。
時間が惜しいから」


男の骨ばった手が捕える。


「ハイハイ。
座ってどーぞ」


そのまま少女の肩を掴んで、クルリと回して。

椅子に座らせて、自らもその正面の椅子に腰を下ろして。

口調はボソボソと頼りないクセに、厚かましいほどグイグイくンな、コイツ。

もはやドッチが客だかわからない。


「おかしな方ね」


少女は口を手で隠し、目元を和ませた。


「…
綺麗だ…」


「なんですって?」


「あー… えー…
どーも、僕は花京院 要(カキョウイン カナメ)」