花京院家の愛玩人形


要のシャツを震える手で握って。
深呼吸で早鐘を打つ心臓を宥めて。

ショックを乗り越え、落ち着きを取り戻すと…


「…


ふふっ」


紫信は堪えきれずに吹き出した。


「…ナニ笑ってンの」


「素敵だと思いまして」


「…青くなってたクセに」


「それは誰でも、最初は驚きますわ。
でも…
要には申し訳ありませんが、やっぱりわたくしは素敵だと思いますわ」


顰めっ面をする要の腕の中で、紫信は笑う。

楽しげに。
優しげに。

彼女はナニを見たのだろう?

目に輝きを与え。

青ざめるほどのショックを与え。

それでもやっぱり素敵だと彼女に言わしめた人形とは、いったいどんなモノだったのだろう?

答えは閉ざされた扉の中に。


「要が苦手でいらっしゃるなら、今後あの部屋のお掃除はわたくしが全面的に承りますわ」


「あー…
それは、わりと本気でありがたいカモ…」


紫信はやはり、楽しそうにそう言って。
要はやはり、顰めっ面でそう言って。

肩を並べた二人は、花京院 叶の秘密が眠る部屋を後にした。