こんなことを考えていたら、ふと私は思った。

…あ、れ?

外って雨降ってるよね…?

雨に濡れながら私の仕事やってくれてる…?
ってこと、だよね…。

「――…」

話すの、初めてだけど確信できた。

優しい人―…なんだと。


「はい」

「へっ!?あっ、ありがと…う」

気がついたら、目の前に黒板消しを持ってる蒼が立っていてビックリした。

あ、やっぱり雨で少し濡れちゃってるな…。
悪いことしたかも…。

「またやるときは言って?今日ならやるから」

「えっ…」

さっきまでの無表情な顔とは違い、ふわっと優しい顔で笑って言ってくれた。

その笑顔に少し胸が高鳴ってしまった。

そして、蒼は去っていってしまった。

髪の毛先に溜まっている水滴。
雨で少し濡れてるTシャツ。

その大きめの背中がとても印象的だった。


なんだろ…。この感じ。

…変なの。

蒼、か…。


私はこの時、蒼のことが少し気になり始めてた。

そんなことにも気づかず、のんきに掃除をしてたことが今、思うと馬鹿馬鹿しいな。