「え・・・嘘。これって、まさか――」

「うん、たぶんそのまさか。ほんまは、日本に戻ってから渡すつもりやってんけど」

「これ、ほんとに貰っていいの?」

「当たり前やん。誰のために、わざわざそんな高いもん買うたったと思ってんねん」

「それは、まあ、そうだけど。それでも何か、申し訳ないよ」

「何でやねん。・・・あ、もしかして、いらんかった?もう、俺のこと嫌いなん?」

「そういうことじゃなくてさ」


こんなことしてくれるの、いつも融じゃん。

私からは、何もしてないのに。


そう言いかけて、私はその言葉を呑み込む。

こんなこと言ったって、仕方ない。

きっとまた、融は「そんなことない」って答えるだろうから。

だって彼は、優しい嘘つきだから。

だから私は、呑み込んだ言葉の代わりに、彼にお礼を言った。

すると彼は、ほんの少し照れ臭そうに笑う。