あれからすぐ、私たちは空港へ向かい、日本を発った。

アメリカへはもちろん、海外に渡ったのもほぼ初めてで慣れないことも多かったけれど、二年もすれば慣れてしまった。

そして今日は、二年ぶりに日本へ帰る日。

今は、その飛行機の中。

私のすぐ隣では、私の愛しい人が寝息を立てて眠っている。

私はその寝顔をそっと覗き込む。

すると彼は不意に目を開けて、いかにも眠たそうな声で、何や、と呟いた。


「え・・・っと。寝顔が、可愛いなぁって」

「ああ、そう。俺の安眠妨害したんやから、どうなるか分かってるよな?」

「ごめんね、融。そういうつもりじゃなかったの。許して?」

「いや、許さん。でも、そやなあ・・・俺の言うこと聞いてくれたら、許したるわ」

「聞きます、絶対聞くから」

「あ、言うたで?俺の言うこと、ほんまに何でも聞いてくれんねんな?」

「まあ・・・私に、できることなら」


そう言って私が頷くと、彼は手荷物の鞄を、何やらごそごそと探り始めた。

それから小さな箱を取り出し、私に差し出してきた。

彼はいつの間にか真剣な面持ちに変わっており、真っすぐに私を見つめていた。

彼が何か大切な話をする時は、いつもそうだった。

それが、彼の癖なのだろう。


私は融の差し出した小箱を受け取り、彼に促されてそれを開ける。