「片山先生!あなた、自宅謹慎処分を受けて――」
「分かっています。でもどうしても、提出しなければならないものがあって」
「提出?何かの書類ですか?」
「・・・まあ、そんなところです」
翌日、私は学校へ出向き、校長に話を持ち掛けていた。
私が辞表を差し出すと、彼女が息を呑んだのが分かった。
それから、しばらくの沈黙が落ちる。
ふと時計に目をやると、文字盤は午前八時を回ったところだった。
時間がない。
私がそう思うのとほぼ同時に、彼女は一言、分かりました、と言った。
私は少し驚いたけれど、すぐに頭を下げ、校長室を後にした。
本来ならば正式に辞任の意を表明しなければならないのだろうが、そんなことをしている暇が、私にはなかった。
事後処理に関しては、辞表に全て記してある。
申し訳ないという気持ちもあったが、私はそれを振り払うように、帰路を急いだ。


