「・・・で?それで、ユズはどうしたいん?」
「どうしたい、って?」
「だから、俺と一緒にアメリカ行くか、ここに残るか」
「そんなの、融と一緒がいいに決まってるじゃん」
「そんなら、辞めてこっち来ればエエやん」
そうすることがさも当然であるかのような口調で、彼はそう言った。
けれど私にそんな突飛な発想があるわけもなく、彼の提案には心底驚いた。
それから、彼が柿本大翔とのことについて、何も触れてこないことも。
もっと、問い詰められるかと思ったのに。
仕事を辞める。
それはつまり、私の大学生活を無駄にする、ということだ。
そうまでする勇気が、果たして自分にはあるのだろうか。
優柔不断。
そんな私の性格は、この二十九年間、ずっと健在だ。
だから今も、こうして結論を出しかねている。
けれど本当は、自分がどうしたいのかくらい、分かっていた。
融と一緒がいい。
だったら、もう、私のすべきことは決まっている。


