今でもまだ、融のことが好きだから?
そんな、まさか。
そうは思ったものの、それ以外に何も理由が思いつかなかった。
私はそっと、彼のことを盗み見る。
相変わらず浅黒い肌に、比較的長いまつ毛。
筋の通った鼻、細長くてきれいな指。
見れば見るほど懐かしく、彼が愛しく思えてくる。
「私、融が好き」
「は?」
言ってしまってから、私は我に返る。
何言ってるんだろう、私。
「融が好き」。
それは、紛れもない事実なのだけれど。
でも、だからって、それは今言うべきことではない。
当然のように、融はきょとんとした顔で、私のことを見つめている。
そんな彼の目を真っすぐに見ることができなくて、私は思わず視線を落としてしまう。
自分の膝頭をじっと見つめていると、不意に、私は名前を呼ばれた。
私は俯いたまま、はい、と返事をする。


