Tender Liar




「・・・ん?」

「融は、ヒロト君って、憶えてる?」

「ああ、ヒロトか。憶えてるけど、ヒロトがどうかしたんか?」

「今年からね、私の勤めてる学校の生徒になったの、彼」

「・・・え?」


私にそう訊き返しながら、融はゆっくりとブレーキを踏んだ。

思わず私も、「え?」と訊き返してしまう。

信号が青になったので、私たちの乗ったモスグリーンの軽は、緩やかに発進する。

けれど融は車をすぐに路肩に寄せ、停車させた。

どうしたのだろうと思い彼のほうを見ると、彼はなぜか真剣な表情をしていた。


「あのさ、ユズ」

「・・・うん」

「ちょっと訊きたいんやけど、ユズ、ヒロトと付き合うてるんか?」