私はそれに、何と答えれば良かったのだろう。
イェス?
それとも、ノー?
正解がノーであるということは、分かっていた。
けれど、私は何も答えることができなかった。
十六歳の彼の中に、昔の「ヒロト君」を探していたから?
それとも純粋に、彼が怖かった?
答えは、そのどちらもだった。
十三年という長い時間の中で、確かに、彼は変わったかもしれない。
けれど、全くの別人になってしまったわけではないのだし、変わらなかった部分だって、必ずあるはずなのだ。
それは、もしかしたら、彼のなかのたった1パーセントだけかもしれない。
限りなく、ゼロに近いかもしれない。
けれど、それはゼロじゃない。
でも、そんな「変わらなかった部分」を見つけたからといって、私には何のメリットも生まれないのだけれど。
「でもさ、本気で考えてくんねーかな」
「え・・・?」
「オレと、付き合うこと。返事は、いつでもいいから」
「いいよ、別に。バレなきゃ、それでいいんでしょ」
「え、それマジで言ってんの」
「こんな嘘ついたって、仕方ないじゃない」
彼はそれから、「ほんとに?」と、何度も私に訊ねてきた。
私はその度に、「ほんとに」と答える。
何だろう。
彼の告白を受け入れたのは、ちょっとした気の迷いだったのかもしれない。
普通、教師と生徒だから、と説得すれば、諦めてくれるものだと思っていた。
けれど、実際はどうやらそうではないらしい。
だったら彼の言う通り、バレなければ、それで良いのではないかと思ったのだ。
自分でも、自分がこういったことを許してしまっていることに、驚いていた。
まさか自分が、こんなことをするなんて、と。


