チャイムが鳴ったのとほぼ同時に、私は教室に到着した。

ほら、さすが私。完璧。

未だかつて、授業時間に遅れたことは、一度もない。

そんなことを考えながら、私は教室のドアを開け、中に入った。

それから「お願いします」と挨拶をして、自己紹介をし、出席をとった。

それだけで、今日の授業時間の大半を費やしてしまった。


「えー・・・と。それじゃあ、何か質問はありますか?」

「はいっ」

「どうぞ。何でも訊いて」

「先生、彼氏いるんですか?」


よくある質問だ、と私は思った。

高校生になっても、こういった話が好きな子は必ずいるもので、二回に一回は、この質問をされる。

それと、あとは「何歳ですか?」とか。

若作りしているつもりはないが、もう三十歳手前だと答えると、かなり驚かれる。

その反応は、素直に嬉しい。


さっきの質問には、ノーと答えた。

恋人なんて、いるわけがない。

独身だとも言った。

それくらいのことを話したところで、終業のチャイムが鳴った。

ありがとうございました、と言われても、今日は何もしていないのに。

そう思いながら、私は教室を出た。

するとすぐに、誰かに呼び止められた。

振り向くと、一人の男子生徒が立っていた。