私が、融宛てに書いた、最後の手紙。
もちろん、返事もあった。
融とは、別に疎遠になったわけではなかった。
とは言っても、連絡を取るのは年に数回だけなのだけれど。
私はというと、もちろんあれから何人かの男性と交際をしてみたものの、すぐに別れてしまった。
お陰で、未だに独身を貫いている。
結婚願望がないわけではないが、かと言ってそれほど焦りもない。
ちなみに、今の職場であるこの第一高等学校、通称「一高」に勤めている男性教師は全員、恋愛対象外のオジサンだ。
この春から着任した人の中にも、いい人はいなさそうだった。
チャイムが鳴る三分前。
私はいつも、それくらいに職員室を出る。
そして、足早に担当クラスの教室へと向かう。
新学期になって、今日から本格的に授業が始まるということもあり、私の足取りは自然と軽やかになっていた。
スキップでもしたくなるのを堪えて、私は一年五組の教室に続く廊下を、ひたすら歩いていた。


