どのくらいの間、沈黙が続いていたのだろうか。
不意に、融が「あのさぁ」と言って、話を切り出した。
私はできる限り素っ気なく、なに、と返す。
「ユズは、覚えてるか?」
「覚えてるって、何を?」
「昔、俺がユズに、ここで言ったこと」
昔、というのは、おそらく三年前のことだ。
その時に融が、私にここで、何か言った?
彼とはたくさん話をしたから、一体そのうちのどれのことを言っているのか、私には分からなかった。
それに、いくら好きだったからとはいえ、交わした会話すべてを記憶しているわけではない。
それでも、たった一つだけ、鮮明に憶えている彼の言葉があった。


