初めての恋だった。

だからもちろん、ふられたのも初めてだった。

私は未熟だった。

とんでもなく、自分本位な人間だったかもしれない。

それが故に、別れを切り出されたのかもしれない。

と、今の私なら、そう思う事ができる。


今でも不意に、彼を懐かしく思う瞬間がある。

その瞬間は突然現れ、すぐに消える。

カメラのフラッシュがその光の残像を見せるように、不意に現れた「彼」もまた、同じように余韻を残して去ってゆく。

たとえば、彼の口によく馴染んでいた、関西弁を耳にしたとき。

たとえば、彼の好きだったこの星空を眺めているとき。

たとえば、彼に似た匂いを嗅いだとき。

そんな時に私は、ふと彼を思い出す。

なぜだろう。

彼は私にとって、最後の恋人などではなかった。

それなのに、どうしていつも、思い出すのは彼なのだろう。