しばらくすると東京に入ったので、私たちは電車を降りた。
そこから私は借りているアパートへ、融と香月先輩はさらに別の電車で地元の横浜に帰るのだ。
ちなみに明日は、三人で東京散策をするという予定を立ててある。
翌日、私たちは朝10時に東京駅で待ち合わせた。
そこからまずは青山へ行き、私がアルバイトをしているカフェに、二人を連れて行った。
「素敵なお店ね、ここ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ちなみに、お勧めはどれ?」
「えーっと・・・あっ、このパンケーキとか。あと、ガトーショコラとか」
「そっか。じゃ、パンケーキにしようかな」
「ナイスチョイスです。・・・融は?どれにする?」
「えっと、俺は――」
「ごめんね、柚紀。融ってば、こう見えて甘いものとか苦手なの」
「あ、そうなんですか・・・」
「うん。だから、コーヒーだけお願い。それでいいよね、融」
「おう、サンキュ」
何だ、そっか。融、甘いのは食べれないんだ。
知らなかった。
でも、香月先輩は、知ってた。
まあ、三年という長いブランクのせいなんだから、仕方ない。
私はウェイターに注文をしながら、そんなことを考えていた。
この三年の間に、何があったのか。
それは、なるべく考えないようにしていた。
知らぬが仏、だ。


