――俺は、いつでも、ここにおるから。
その約束を破って、彼は日本を発つのだ。
けれど、そのことを、三上さんは結局ヒロト君には一言も告げなかった。
きっと、このままずっと隠し通すつもりなのだろう。
それならそれでいいと、私は思った。
知らぬが仏、という言葉があるように、人には、知らないままのほうが良いことも、たくさんある。
私たちはヒロト君と最後のお別れをしてから、公園を出た。
「あんな、柚紀ちゃん」
駅までの道を歩きながら、三上さんはそう切り出した。
私は、何ですか、と返事をする。
けれど三上さんは、しばらくの間じっと黙っていた。
もしかしたら、何か言いづらい話でもあるのだろうか。
そう思いながら、私が「三上さん」と声をかけようとした時だった。
あんな、と三上さんはもう一度切り出した。
「俺、もう、サクちゃんとは別れよう思うんや」


