「アホやなー、あいつ」
ヒロト君との話はいつの間にか終わっていて、走り去る小さな背中を見つめながら、三上さんは呟いた。
二人の会話を聞き流していた私は、彼が一体何のことを言っているのか分からなかった。
「あいつ、俺がほんまにずっとここにおったと思ってたんやて」
「純粋なんですね、ヒロト君」
「まぁ、コドモやしな。マセたガキや。好きとか嫌いとか、あんな歳で考えんでエエのに」
「でも、やっぱり気になるんじゃないですか。それとも、ヒロト君に好きな子がいるとか」
「あー、なるほどね。それは有り得るかもしれんな」
そう言って、三上さんは何度も小さく頷いていた。
こんなことを真剣に考えているのかと思うと私は彼が愛しくてたまらなかった。
何て可愛い人、と思った。


