「あれ、もしかして」
「え?」
「ああ、やっぱりそうやった。後ろ姿やと分かりにくかったけど」
不意に後ろから声をかけられたので、振り返ってみると、そこには三上さんが立っていた。
彼の話す関西弁が、なぜだかひどく懐かしく感じられた。
彼の言葉は、耳に心地良く流れ込んでくる。
声もいい。
そこがまた、彼に惹かれる理由の一つでもあるような気がした。
「何や。彩と柚紀ちゃん、仲エエんか?」
「え?うん、まあ。・・・だよね、柚紀」
「はい」
「ええ、ほんまに?柚紀ちゃん、言わされたんちゃうんか」
「いえ、違います、本当に。私、先輩のこと好きですし」
「ふーん、そうなんや。二人で、こんな遅うまで何してたん?」
「ちょっとお話、です。相談したりとか」
「相談?柚紀ちゃんが?」
「えっと、それは・・・」
「あ、ごめん。別に、内容まで聞かんから。でもまあ、俺にも時々は相談してな」
「え・・・三上さんに、ですか?」
「いや別に、強制と違うから。嫌なら、無理にせんでも」
「じゃあいつか、また何かの相談しますね」
「ん、ああ・・・いつか、な」
そう言った三上さんは、少し寂しそうな表情をしていた。
今、三上さんが言ったことは、本気?それとも、冗談?


