Tender Liar



「ごめんね」。

そう一言だけ呟いて、彼女はにっこり微笑んだ。

右の頬だけに、小さなエクボを作って。

こんな人が、こんなに愛らしい人が、どうして幸せになれないのだろう。

神様は、いつだって意地悪だ。


けれど、もし香月先輩が三上さんの彼女だったら。

もし、初めからそうだったら、私は三上さんを好きになっていなかっただろうか。

答えは、おそらくノーだ。

三上さんは、三上融以外の何者でもないのだから。

つまり結局、私のこの密かな恋は、報われることがないのだ。

そう考えると、何だか急に切なくなった。