Tender Liar



「・・・ね、柚紀。あれ、誰だろう?」

「え、どれ?」

「ほら、あの人。三上先輩の隣にいる、綺麗な人」

「ああ、あれはね――」


――香月彩(コウヅキ サヤ)さん。あの人は、私の先輩。


私は、得意げにそう答えた。

香月先輩は、私の大好きな先輩だった。


色白で、可愛くて、細くて、優しくて。

おまけに、いつもシャンプーのいい匂いがしていた。

誰もが憧れる、そんな存在だった。

そして彼女もまた、三上さんと同い年。

仲が良いのか、時々ではあるが一緒にいるところを何度か目にしたことがある。

その度に私は、香月先輩を羨ましいと思った。