「おー、そうか、カップルに見えるんか。嬉しいなぁ」
「え、じゃあ、ちがうの?」
「さぁ、どうやろな。このお姉ちゃんは、俺のこと、好きなんやて」
「えー、ほんとに?ほんとなの?」
「そうや、ほんまやで。あ、おまえ、名前は?」
「ヒロト!ぼく、カキモト ヒロト。お兄ちゃんは?」
「俺はなー、三上融ゆうねん。変な字書くねんで、融って」
「トール?どんな字?」
「言うても、分からんと思うけど。ヒロトが大人になったら、また訊きに来い」
「えー、また会えるかな?トールと」
「会えるに決まってるやろ。俺は、いつでも、ここにおるから」
「ほんとに?じゃあ、待っててね!」
「おう、待っとく待っとく。ほら、早よみんなのとこ戻らな。ボール、おまえが持ってるやろ」
「あっ、そうだった!じゃあね、トールと・・・」
「柚紀、や。この姉ちゃんの名前」
「・・・またね!トール、ユズキ!」
ヒロト君はそう言って、私たちに大きく手を振った。
三上さんも私も、それに手を振り返す。
手を振りながら、私は三上さんの横顔をそっと盗み見る。
満面の笑み。
…ほら、こういうところとか。
時折見せる、彼の「無邪気」。


