あまりに聞き慣れない関西弁を耳にして、私はしどろもどろになりながら、いいですよ、と答えた。
一緒に帰るつもりだった友達は、いつの間にかいなくなっていた。
どうやら私たちに気を遣ってくれたらしい。
三上融(ミカミ トオル)さん。
それが、彼の名前だった。
先輩と同い年だから、年は二つ上。
少し浅黒くて、いかにもスポーツマン、という感じの人。
全然、私のタイプじゃない。
私の好みはというと、色が白くて、控えめで、爽やかな人、だった。
言わば、三上さんとは正反対の人なのだ。
それでも私は、三上さんが嫌いではなかった。
むしろ、好感すら持っていた。
彼とは二つしか年が変わらないはずなのに、彼はひどく大人びて見えた。
そしてその大人っぽさの中に垣間見える、無邪気さ。
それが、彼の一番の魅力なのではないか、と思う。
彼は、自分の彼女である私の先輩ーー名前を河野桜(コウノ サクラ)といったーーのことを、いつも「サクちゃん」と呼んでいた。
たとえば、ほら、そういうところとか。


