「・・・いえ、知らないです」
「ま、私も知らないんだけどね」
「でも、心当たりはあるんですよね?」
「うん。・・・病院、だと思う」
「え?どうして、融が?仕事の都合で、とかですか?」
「残念だけど、そうじゃない。・・・わたしが話していいの?どうせなら、本人の口から聞きたいでしょ」
「・・・はい」
私が頷くと、彼女は車のエンジンをかけ直し、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
窓の外の景色が、飛ぶように流れ去ってゆく。
けれど私は、心の中で「もっと速く」と願っていた。
もっと、もっと速く、走って。
今すぐにでも融に会わなければ、大変なことになってしまうのではないか。
根拠なんて、何もない。
けれどなぜか、そんな気がしたのだ。
――俺は、いつでも、ここにおるから。
私はずっと、あの言葉を信じている。
どんなにつらいことがあっても、融のこの言葉を信じれば立ち直ることができた。
私は今すぐ、融に訊きたい。
あれは嘘じゃないよね、なんてことじゃない。
そんなのは、訊かなくたって分かる。
私が彼に訊ねたいのは――


