Tender Liar



翌朝。

私が目を覚ました時には既に、融の姿はなかった。

その代わり、テーブルの上に置き手紙が残されていた。


――俺は先に出るから。今日は楽しめよ!


書いてあったのは、たったそれだけだった。

一夜を共にしたにしては、あっさりしすぎている。

まあいいか、と思って携帯を見てみると、香月先輩から連絡が入っていた。

私は慌てて、すぐに彼女に電話をかける。


「あ、もしもし。柚紀?」

「はい・・・すみません、寝てました」

「やっぱり。でさ、今日どっか行きたいところある?」

「え・・・いや、ないです」

「そう?まあ、とりあえず迎えに行くね」


それから少し言葉を交わして、私は電話を切った。

そしてその約十五分後、外からエンジン音が聞こえてきた。

部屋の窓から確認してみると、案の定、そこには香月先輩の車が停まっていた。

私は急いで身支度を調え、彼女の元へと向かった。

彼女はすぐ私に気付き、車内から助手席に座るよう言ってきた。

私は言われた通り、助手席に乗り込む。


「ありがとうございます」

「いいえ、お礼なんていいのに」

「ところで今日は――」

「あのさ、柚紀。柚紀は、融が好き?」