あれは、高校に入学してから二ヶ月がたつ頃だった。

その日は朝は雨が降っていて、午後からは午前中の雨が嘘のように晴れたのだ。

だからそこすっかり忘れていた。

朝、傘を持ってきていたことに。

昇降口で友達の菊池夏子に言われて気がついた。

「真緒、あんた傘は?」

「え、あぁ!忘れてた!とってくるから待ってて!」

そう言って、夏子の返事も聞かずに今来た道を戻っていった。

真緒は自分の教室の前に立ち、ふと思った。

なんでドア閉まってるんだろう。

隣のクラスもその先も、みんなドアが開いているのに、私のクラス、二年五組はドアが閉まっている。

前も後ろもだ。

もしかして誰かいる?

もし仮にここで誰かが告白をしていたら……

私はなんとも空気の読めない女になってしまう。

そう思って後ろの窓から教室の中を覗いた。