「別に、迷惑くらい、いいんじゃないの。」



「え…?」



「僕だって完璧じゃないから色んな人にたくさん迷惑かけるし、怒らせることも傷つけることもあるし。…でも結局それってお互い様じゃん。」



「…でも、私の迷惑はそんな軽くて小さいものじゃないんだよ。」



「いいんじゃない、さっき僕に言ってくれたでしょ。だとしたら、沙月がつくった大切な人なんだからきっと受け止めてくれるよ。」




僕も、沙月ではない街の夜景を見ながら、そう呟く。



驚いたような顔をして沙月が僕を見たのがわかったけれど、すぐに彼女が顔を綻ばせた。




「…ありがとう、すずくん。もうちょっと考えてみる。」




唇を噛みしめるようにして、微笑んだ彼女に頷いてみせる。




実際に僕だって沙月のわがままを聞いている身だし。




でも、それが煩わしいと思ったわけではないから。




そう考えていると、「でも」と彼女が声を出した。




「私の1番大切な人は、すずくんだよ。」




見開いた目でそっちを向けば見惚れてしまいそうなくらい綺麗な彼女が笑う。




突然のセリフに混乱していると、「顔真っ赤〜。」と笑われてしまった。




「…からかってる?」



「え、ひど〜い!心からの本心なのに!」



「………。」




本当、彼女には敵わない。