今夜、君に月をあげる。








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「すずくんー、こんばんはー。」



「沙月。」





その日の夜、約束通り、屋上に向かえば沙月が僕に手を振っていた。




「…んー、今日は曇りだねー。月が見えないー。」



「まあ、仕方ないよ。」




「いやいや、知ってる?週間の天気。ここんとこずーっと曇りなんだよ?一応晴れって出てたけど、満月の日まで曇ったらどうしよう…。」




「曇ったら?どうするの?」



「一生の後悔になるよね。」




僕の質問にそう答えた沙月に、また大袈裟なんだから、と少し笑う。



まあ、これだけ月が出るのを楽しみにしているのに、折角の満月が見えないのはショックかも。




でも、前も言った通り来月だってあるのに。





「…今の月は、今しか見れないんだよ。」





僕の考えを察するように彼女がポツリと呟く。




前も似たようなセリフを聞いた。




ずっと月が見れるという保証はない、と。




本当沙月って今時の高校生としては珍しいくらい、"今"を大切に生きてる。





…少しは僕も、見習うべきか。