「あーあ、いいなぁ。鈴木ばっかりどんどんかっこよくなっちまって。」
「何言ってるの。僕だってモテてるわけじゃないし。」
「本当お前は女子に興味がなさすぎるんだよ。」
松坂と同じタイミングで完食したお皿を2人で返却口へ返しに行く。
食堂のおばちゃんに「ごちそう様でした。」と伝えて置くと、松坂が「そういうところ。」と呟いた。
「そういうところってなに。」
「お前はちゃんと礼儀正しいし、優しいし。平凡だけどお前は凄え人間だよ。」
「すごい支離滅裂なこと言ってない?」
「ちげえよ。」
教室へ帰ろうと歩く途中、僕と身長差がある松坂を見上げると、僕を見ずに呟く。
「お前は、人間として大切なことすごい持ってるってことだよ。」
「…え。」
「変に突出したスペックがあるよりもそういう奴の方がずっといい。人間として出来てるってこと。」
まさかそんなこと言われると思ってなくて驚愕で口をぽかんと開ける。
だけど言葉の意味を理解した途端、じわじわと心に染み込む嬉しさを逃さないように、そっと唇を噛みしめるように結んだ。
「…急に、びっくりさせないでよ。」
「こんなことまで言った俺にも塩対応?まじでか…ってお前照れてんなよ。」
「照れてないから。」
そう言った僕に嬉しそうに笑った松坂が、強く肩を組んでくる。
「松坂。」
「おう、なんだ?」
「痛いし苦しい。」
「おう!離さねえけどな!」
松坂の返しに小さくポカッと叩くと、2人で同時に笑う。
ああもう、なんでこんな歳になってまで、こんな小さな言葉で喜んでるんだろう。
なんて、そんな言葉が嬉しいに決まってるからだ。


