疑問を浮かべて僕の顔を覗き込んでくる沙月に、「何でもないよ。」と答えると余計に眉をひそめられる。
「うそだよ、何でもないって顔してないじゃん。」
「そんなこと…。」
「いいから、言ってみて?」
少しだけ強情な彼女に観念するような気持ちで、小さく息を吐いた。
このまま誤魔化しても、お互いスッキリしないだろうし。
「…さっき沙月の白いカードっていうか厚紙のカードに【患者カード】って書いてあるのが見えちゃって。」
「ああ、なんだ、それかぁ。それはね、かなり昔のやつだよ。」
「昔…?」
「そ。昔、かなりひどい喘息があってね。念のため入院って言われてたの。その時のやつがそのままあるだけなんだよ。」
「今は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫〜。」
Vサインを出した沙月になんとなくホッとする。
僕が見たのは名前だけだからよくわからないけど、沙月はこんなに元気だし具合悪そうなところなんて一回も見たことない。
てことは、もうしっかり治ったんだろうな。
「よし、誤解も解けたことだし!今日は本当にありがとうね。すずくん!」
「こちらこそ。沙月と行けて楽しかったよ。」
「えへ、照れるなぁ〜。本当にいい思い出になったよ。」
「後悔、消えた?」
「…うん。」
微笑んだ彼女が、じゃあ行こっか、と歩を進める。


