今夜、君に月をあげる。







「── ねえ、本当にそれ貰うの?」



「うん!だって思い出じゃん!1枚くらい欲しいのー!」




相変わらず疲れ果てて眠ってしまった電車を降りて、僕達の地元の駅に着く。



改札の近くで意気込んでいる沙月に、うーん、と首をかしげた。



…沙月が思い出を作るのをすごく大切にしているのは今日十分知ったけど、電車の切符を持ち帰りたいとまで言うとは考えつかなかったな。




『切符って貰えるのかな?』って沙月が聞いてきたから、




思わず『駅員さんに言えば何かしら対応してくれるかも。』って予想だけで言っちゃたけど…。





幸い、僕らの帰る最寄りの駅は有人駅だ。




「…沙月は、本当に1日を大切にするんだね。」



「1日を大切にする…?」



「だって、思い出をそんなに作ろうとするなんて今日をすごく大切にしてるってことじゃん。」




改札に向かいながら沙月に伝えると、頰を若干染めて唇を噛み締めていた。



心なしか、少しだけ嬉しそうに見えて。





「…今日って2度と戻ってこないから、出来る限り大切にしたいの。誰にだって時間は有限だから。」




言葉を紡いだ君に、僕も微笑む。




…今日を大切にする、だなんていつぶりに考えたんだろう。




その日しのぎで1日くらいってどこかで思ってた気がする。




だから、純粋に沙月が羨ましいと思う。