高校2年生の9月。



くじ引きによりやっと勝ち取った1番後ろの席から、ふと若宮さんの席を見てみる。




僕は教室のど真ん中の列の1番後ろだけど、廊下側の1番後ろは今日も空席だ。




「…月光の姫、か。」



確かにそんなあだ名が似合ってしまうくらい昨日見た彼女は綺麗だった。



…一目見て、若宮沙月なんじゃないかと思ったんだから。




それにしてもなんで彼女は屋上にいたんだろう。




今まで決して学校に現れなかったのに。




しかも屋上は普段から鍵がかかっていて立ち入り禁止のはずだ。




僕も、ダメ元で屋上に向かっただけで。




何より、昨日の彼女の言動はあまりにも不思議すぎる。




昨日の夜から悶々としてる疑問が頭をまた駆け巡って、仕方なく思考を止めた。




…やめよう、いくら考えたって答えは出ない。




考えたところで混乱するだけだ。