今夜、君に月をあげる。






「見て、すずくん。海月…!」



「カイゲツ…?ああ…、確かに、月だ。」




沙月が指差す方向へ視線を向ければ、そこには確かに陽と入れ替わるようにして輝く上弦の月に似た光があった。



そういえば、さっき海月の意味、言ったような気がする。





「…海で見る月も屋上で見る月も相変わらず綺麗だね〜。」



「そうだね。」



「お?すずくんも月の良さわかって来た??」



「いや、沙月ほどわかってない。」




僕が言うと、ぶうっとむくれた顔をするけど、すぐに表情を変えて足を止めた。



すると、両手の人差し指と親指だけを開いて、四角を作る。



その中を写真を撮るようにいい位置を探して、覗き込んだ。





「なにやってるの。」



「ん?いやー、この景色目に焼き付けたいなーって思って。」



「写真に撮ればいいのに。」



「それじゃ美しさが全然違うの!」




口を尖らせた彼女に、そうかなあ…と思って同じようなポーズを取ってみる。




四角を作って、月と海をセットにすると本当に一枚の写真のようになった。




夜空に浮かぶ綺麗な月が、揺れる黒い海面に映る。




青白い光とともに、僕らまで神秘的な気持ちになる。




彼女の言う通り、この気持ちまでは写真になんて映らないかも。