今夜、君に月をあげる。







松坂といい沙月といい、僕をなんだと思っているのか、とぼんやり考えている間に、どうやら沙月はそのスノードームを買うと決意したらしい。




手に乗せて、「綺麗〜…!」なんて言っている姿を見ると、なんだか無意識にこっちまで微笑んでしまう。




「…すずくんは何買うの?」



「え。買わないつもりだったけど。」



「え!?ひどい!私との思い出残そうよ〜!!」




ふとこっちを向いた彼女の問いに答えれば、いきなり肩を揺すぶられて困惑する。




いや、だって思い出を残すって記憶には残ってるわけだし…。




「あ、今記憶には残ってるって思ったでしょ〜。甘いんだなあ。」



「甘いって、なにが…」



「すぐに忘れちゃうってこと。人間色んなこと忘れやすいんだって。」



「ああ、まあそれはよく聞くけど。」




僕の英単語とか特にね。



でも、さすがに沙月と来たことくらい忘れないと思うけど…。





「忘れちゃうよ。きっと、すずくんは私のこと。すぐに忘れる。」





でも、沙月がまた寂しそうな瞳を浮かべているから。




どうして、とか、なんでだろうってまた不思議になる。





「…なんで、そう言い切れるの?」



「わかるよ〜、ふふっ。でも、大丈夫。私は覚えてるからっ。」





スノードームに視線を向けて、明るい声で言った彼女に無性に胸が締め付けられた。