今夜、君に月をあげる。






「ちょっとなんで笑うのよ、すずくん。」




むうっと膨れた彼女に若干笑いそうになりながら、近づくとフワフワと揺れるクラゲが僕達のそばに見えた。




暗めの照明と青いライトによって、非現実的な世界が表現されている。



まるで月光のように蒼い光が、ふわふわとまわるクラゲを照らす。



ふと、横を向けばわずかに漏れる光によって、儚い彼女が更に見惚れるほど綺麗に映えていた。




「クラゲを海月って書くの、海中の月に見えるからなのかな。」



「…そう、かもね。」



「そっかぁ、いいなあ、私も月みたいって言われるくらいに綺麗になりたい。」



「…君は充分綺麗だよ。」




思わず溢れていた。そっちの方が感覚としては正しいかもしれない。



横顔が、驚いたようにこっちを向いて、目が合う。



…な、にを僕は言ったんだ、ろう…。




混乱してとぼけようにも言葉がうまく出なかった時に、彼女が柔らかく、だけど嬉しそうに微笑んでくれた。




「…ありがとう、すずくん。そんなこと誰かに言われるなんて思ってなかった。」



「…真実言っただけ、だよ。」



「あははっ、たとえお世辞だったとしてもなんか照れるなあ、これもクラゲさん効果かな??」




また水槽と向き合って、わずかに顔を綻ばせた沙月にホッとする。




…平凡で、恋愛経験なんて全くないし、それこそ不器用だから、



考えるよりも先に沙月を褒めてしまった。



気持ち悪がられなくて良かったけど、…こんなこと初めてだ。



それも、これも、きっとこんな夢みたいな空間だからだろう。