「ていうか若宮さんって一回も授業出てないよね?」
「んあ?…ああ、まあな。でもすっげー秀才って噂だぞ!」
下駄箱で靴を履き替えて教室までの廊下を進む途中で、沸いた疑問に松坂が答えた。
ああ…、そういえばどっかで聞いた気がする。
実は彼女はすっごい秀才で、進学校であるうちの学校が授業に出なくても進級させてくれるとか。
実は在籍しているだけで海外に留学してるとか。
全部根拠のない噂ばかりが歩き回ってるんだよなあ…。
「…でもお前が月光の姫に興味持つなんて珍しくね?そういうの一切興味なしだったくせに。」
「…別に、何となく気になっただけ。」
「怪しいなぁ〜」
変なところが鋭い松坂にドキッとしながら逃げるように教室へ入った。
昨日の話をしたところで誰が信じるのか。
僕自身だって信じられてないのに。
なんなら幻だったんじゃないかって思った方がしっくりくる。