今夜、君に月をあげる。






「ふふっ、でもオシャレだね、すずくん。」



「いや、これは姉ちゃんに仕立てられたっていうか…。」




昨日、母さんに江ノ島に出かけてくる、とだけ伝えたら姉ちゃんに見事に捕まってしまったのだ。




『江ノ島に行くの!?まさかデート!?デートなのにまさかいつもみたいな平凡な可もなく不可もなくみたいな服で行くつもり!?バカなの何言ってんの寝言は寝て言いなさいよちょっと来て!!』




お得意の弾丸トークで否定も抵抗する暇もなく、僕の部屋に引っ張り込まれたかと思ったら、完全なる着せ替え人形と化した。




結局、白いVネックのシャツに、黒いロング丈カーディガン、黒のズボンという僕のシンプルがいいという意見がちょっとだけ反映されたコーディネートになったんだけど。




『カーディガンって…、明日の気温30度超えるんだけど。』



『知るか。薄い素材なんだからそれくらい我慢できるでしょうが。夜の海岸沿いは寒いんだから。』





沙月と一緒にエスカレーターを昇りながら、思い返す。




…昨日の記憶を回想してみてもやっぱり僕の意見"シンプル"しか採用されてないからね。