「すずくんっ!こっちこっち!」
「…今日は早いんだね。」
「昨日はたまたま遅くなっちゃっただけだよ〜、予想外だったんだから。」
僕の感想にヘラっと笑って、フェンスの近くへと手招きをする。
素直に導かれれば、彼女の視線の先には上弦の月が浮かんでいた。
「…はあー、綺麗だね。上弦の月っていわゆる半月だけど繊細でしなやかって感じがする。」
そう言った沙月へと顔を向けると、息を飲むくらい整った横顔が目に映る。
お昼に松坂達と沙月について話したからか、心臓がドクっと小さく脈打った。
「…晴れて良かったね。昨日は曇ってたから月も見えなかったし。」
「本当だよ〜、上弦の月見れなかったらショックだったもん。今日と明日は晴れるらしいよ。」
笑顔でこっちを向いた沙月と目が合う。
上弦の月が見れないってだけでショックを受けるだなんて…。
本当に沙月は相変わらず月が好きすぎる。