今夜、君に月をあげる。








僕は寝ていて、彼女は座っているから僕には小さな背中しか見えない。




桜は本当に僅かな間しか咲けなくて、散ってしまうと認識しているから人々は綺麗だと言う。




彼女にとって月も同じようなものなのかな。






「でも、月は何度ものぼるし1ヶ月後には新しい満月がくるじゃん。見えなくったって、空にはあるわけだし。」




「…まあ、そうだけど。ずっと月があるって保証はどこにもないじゃない。…明日や明後日にいきなり消えちゃうかもしれない。来月が来ないかもしれない。」





「地球の衛星じゃなくなるってこと?」




「そういうこと。だから私は月を目に焼き付けていたいの。いつ消えるかわからないから後悔しないように、今だけの月をしっかり。」




沙月がどんな表情をしているかなんてここからは見えないのが少しもどかしいけど、






彼女の凜とした声が耳にやけに残った。