「…、鈴木千里(スズキ チサト)…」
「ふうん……」
一応名前を言うと、空返事を返しながら立ち上がる。
淵に座っていただけあって、足を一歩進めたら落ちてしまいそうな場所にもかかわらず彼女は平然としてる。
でも、ここは5階だから、落ちたら無事なわけがない。
「…あ、あの、若宮さんっ、…早まらない方がいいんじゃない、かなっ?」
必死で声を出して、止めようとするけど、僕の方へ体を向けて闇を背にした彼女はクスッと静かに笑った。
「安心して?…私は、死なないよ。…ていうか、死ねないよ。」
「は…?」
彼女の言葉がすぐに理解できなくて思わず聞き返した瞬間、
後ろ向きのまま彼女が下へ自ら
落ちた。