今夜、君に月をあげる。







「すずくん昨日さ、すぐに屋上から飛び出しちゃったでしょ?」




「そりゃあ、…あの場面で冷静にここに突っ立ってられないでしょ」




「それもそっか。…じゃあ、今日はここにいて?今から私が何してもここにいて。」







真剣そうにそう言って、静かに口角を上げてから目を閉じる。






そして、ゆっくりと彼女が両手を上げた瞬間から、時が止まったように感じた。






周りの音が一切聞こえない。





彼女の動きだって一瞬のはずなのにまるで永遠のようにスローモーションで。






音を立てずに彼女が後ろへと倒れていく。






彼女が立っていた場所には、ただ闇が広がって。






昨日と同じ光景。あまりの衝撃に動けなくなっていた頭がハッと蘇る。







「…さ、沙月っ!?」






勢いよくフェンスのそばに駆け寄るけど、うまく下が見えない。





まさか、…。





彼女の“死なない"って言っていたことが真実ではなかったら…。






……僕はなんで一瞬でも信じてしまったんだろう。






「すずくん。」






あまりにも恐ろしい展開を頭で想像していた時。






さっきまで聞こえていた声が後ろから聞こえて、心臓が音を立てた。







「…えっ、そんなに顔真っ青にしなくても…、私のことそんなに心配だった?」







ただただ言葉を失って、目を見開く。






だって、後ろには、






さっき飛び降りた彼女が、








微笑んで立っていた。