今夜、君に月をあげる。








「…信じられない?…じゃあ、見せてあげる。」




微笑んだ彼女が、ゆっくりと歩き出す。




嫌な予感がして止めようと手を伸ばしたけれど、彼女がスッとその場を離れたせいで叶わなかった。




「ちょっと、待って、沙月…、何する気っ…?」




「すずくん、見ててね?」





振り向いた彼女がゾッとするくらい綺麗に笑って、フェンスに付いているドアを当たり前のように開ける。




「ここのドア、鍵壊れてるんだよ〜?屋上自体に鍵付いているからってテキトーだよね。」




彼女のセリフにもうまく反応できない。




何かしなきゃって思うけれど、足が動かなくて。




止めなきゃって感じたけれど、息が吸えなくて。







彼女が淵に立って、こちらを振り向いた。