今夜、君に月をあげる。







でもね、僕はやっぱりわがままだから。




君に会いたいって、そう思っちゃうんだよ。




右手に持っていた花を、そっとフェンスの近くへ置いた。



紫の花が可憐に僕を見る。



…紫苑の花。



花言葉は、“『君を忘れない』”。




…この屋上に、あの時訪れたのは偶然だった。



あの日、君に会ったのも偶然だった。



でも、僕はその偶然に今でもずっと感謝してる。





君と過ごした日々が夢だったのなら。



それでもいいよ。



それでもいいから。




現実で会うのが難しいのなら、夢でもいいから。




…たとえ夢でも、君に逢いたい。




そこまで思って、唇を弧に描いた。




…そうだね、君に夢で逢えるのなら、




今夜、君に月をあげる。





Fin.