ゆっくりと崩れるように膝をつく。




実感なんてなかったのに、空っぽな目の前の光景が嫌でも現実を突きつけてくる。




…沙月が、いない。



それだけが伝わってきた。




「う、…っ、うわあああっ…!!」




ずっと抑えていたものが溢れ出す。



いつの間にか頰にさえも涙が流れた。




無理だった。限界だった。



沙月がいない現実をしっかりと受け止められるほど、僕は大人じゃなかった。



散々君のことを子供みたいって思ったけど、僕だって子供だ。



…だって今駄々をこねて、こねてこねてこねてもいいから、君を返してほしいんだよ。




その時、右手でずっと握りしめていた2つの栞が目に入る。



それを見て、余計に目から涙がこぼれだした。




「忘れる、わけ…っ、ないだろっ…。」




何も持っていない左手を強く握りしめる。




“『ふうん、でも今まで大切に持ってたんだねっ。』”




僕が栞をまだ持っているってわかった時に、彼女は嬉しそうだった。




“『でもね、私は『運命だー!』って嬉しかったのっ、だってあのすずくんが目の前にいるんだもん。』”




今なら、あの不思議な言葉の意味さえもわかるのに。




…聞いてないよ、小さい頃会ってたなんて。



運命だって思ったのなら、教えてよ。