「で、どこ行くの?」
「ん〜っ、遠出もいいなって思ったけど、やっぱり今日はこの街を目に焼き付けたいなって。」
「そうだね、それがいいかも。」
彼女の提案に頷けば、嬉しそうな顔を見せる。
なんだかんだ言って、確かに最後は自分が過ごしてきた故郷にいたいよな。
彼女の考えに心底同感した時に、スマホがチカっと光った気がした。
ふとディスプレイを覗くと、松坂から『おい鈴木ぃ!?3年連続皆勤狙うって話は!?』っていううるさいメッセージが表示されている。
ああ、なんか1年間休まなかったからそんなことを軽く言ったような。
…だけど、軽く言っただけで本気で狙ってたわけじゃないんだけどなあ。
焦っている松坂を思い浮かべてなんだかクスリとしてしまった。
ごめん、今日だけは許して。
「ねえ、すずくんっ、まずは〜っ、美味しいスイーツ屋さんがあるんだって!そこ!行ってみたい!」
「え、うちの市にそんなのあるの?」
沙月の口から想像外に場所が提案されるから、思わず聞き返してしまう。
なんだか地元を卑下しているみたいだけど、そういうわけじゃなくて。
決して都会ではないから、そんなオシャレな場所があるなんて聞いたこともなかった。