遠くで、ガイドさんが星空を解説している声が聞こえる。



だけど今ここにいるのは、僕達2人だけのようにさえ感じた。




「…なんでもね、綺麗に見えるんだよっ…。明日には見れないかもしれない、消えちゃうかもしれないって思えばっ…、驚くくらい綺麗で、儚くてねっ。」



ああ、だから。



なんてことない日々の月でさえ、君には綺麗に見えるのかな。



こんな時、君と同じ景色が見られたら、上手い言葉でも言えるのかな。




なんてまた、ないものねだりばかりだ。




「…バカだなぁって思うけど、だけど、…そうじゃなかったら沙月と出会えてなかった。今日の景色だって、見てなかったよ。」




沙月が驚いたようにこっちを見たのがわかる。



上手い言葉は言えないけど、これが僕の、僕なりの言葉。




明日死ぬかもしれない君に逢いたかった。




だけど、死ねない君じゃないと、僕は出逢えなかったのかもしれない。




だとしたら、わがままでごめん。でも、…僕は君に逢いたかったから。





「だから…、正解じゃないけど…、僕はその選択を選んでくれたこと、奇跡だなって、…思ってる。」




すぐ近くで息を吸い込むのが聞こえた。



泣くのを堪えるように、酸素を飲み込んだ音。



弱々しいのに、凛とした君の声が空気を震わす。




「…私っ、絶対に…、…絶対に、今日の景色もこの星空もっ、…絶対に永遠に忘れないっ…。」




目が合った彼女は、とびきり美人で。



…見惚れてしまうくらい、綺麗な微笑みを泣きながら浮かべてくれた。