「うん、…バカだね、私っ…。」
彼女が泣きながら嘲笑うように笑う。
「…今まで後悔なんてしなかったけどっ…、こんなに星空が綺麗だなんて、知らなかったの…っ、…私は、まだまだ知らないことだらけだったのっ…、もっともっと、たくさん見てみたいの、もっと生きてみたいのっ…。」
震えた彼女の声が宙に舞う。
その言葉は、星に吸い込まれるように消えていく。
僕も彼女も、これから先も沙月の命が続くように祈っているのに、どうして。
どうして、その灯火が消えてしまうの。
どんなに駄々をこねても、ゆっくりと近づいてきていて、必死で目を逸らしてもやってくる。
「…ねぇ、すずくん。…空、本当に綺麗だねっ…、っ。」
どうして、どうして。こんな状況で。
どうしてこんな状況なのに、君は空が綺麗だなんて言えるんだろう。
その澄んだ瞳には、どれくらい綺麗な景色が映っているんだろう。
「僕は、沙月と同じ景色が見てみたい…っ。」
素直な言葉だった。そんな綺麗な景色が見たい。
僕の目には十分綺麗に見えるこの景色が、君ならその何十倍も綺麗に見えるんじゃないか。