今夜、君に月をあげる。






「私ばかり初めてなことが多かったから、すずくんと“初めて”を共有できて、嬉しいの。」




美しすぎる星空を眺めながら、沙月がポツリと呟いた言葉を聞いていた。



確かに、沙月は“初めて”っていうことがすごく多かった。



そんな些細なことまで?って思うほどには。



だから、誰かの初めてと自分の初めてが重なったのが嬉しいのかな。




「…初めてだよ、今日のこと全部。」



「んふふっ、それは嬉しいっ。」




おどけたように彼女は笑うけど、これはまぎれもない事実だった。



他の女の子とこんなに遠出なんてしたことない。



他の女の子とうどん屋や観光なんてしたことない。



ましてや、こんなに綺麗な星空を一緒に見るなんて、沙月以外ありえない。




…全部、沙月が初めてだ。




「月も、あったらよかったね。」



「…うーん、確かに月もすっごく綺麗だろうけど、もし月があったら月の光で綺麗に星空が見えないらしいの。」




僕の不意に呟いた言葉に彼女が、考えるような声を出す。



気になって、また沙月の方を見るといたずらっ子のように舌を出した。




「だから、今日はこんなにも綺麗な星空が見えたからラッキーなの。それに、月ならここにあるしね。」