今夜、君に月をあげる。






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「すずくん見てみてっ!!やっと見えてきたよ!」



「よくこんなに暗いのに見えるね。」



「私視力はいいんだ〜、すずくんは?」



「0.7。」



「……。」



「反応に困る視力でしょ。知ってた。」




笑顔のまま固まった沙月が予想通りの反応すぎて動揺すらしない。



視力まで特別良くもなく、悪くもなく…、僕はどこまで平凡なのか。



うどんを食べたあの後、商店街を歩いたりしてたくさん観光してから、また電車に乗って目的地のスキー場にたどり着いた。



今は、チケットを購入して鑑賞場へ行くゴンドラに揺られながら、僕の平凡さにショックを受けている。




「ち、違うよ、ほら、あのっ、私の視力が1.5だからどんな見え方なのかなって思って。」



「どんな見え方って…、別に普通に見える感じ。良く見えるわけじゃないけど見えないわけじゃない。」




あれ、これってTHE平凡ってことでは。



沙月のフォローへの応答に余計に傷を抉った僕は、コツンと前の席の後ろへおでこをつける。



もうとっくに日は沈んだから、ゴンドラの外は真っ暗で。



窓に反射して見える沙月が、あわわと焦っているように見えつつも口角が上がっているのが見えた。