「322番の月見うどんの方、323番のきつねうどんの方〜!」
食券を出して、少ししてからずっしりとした男の人の声に呼び出される。
厨房のカウンターに持ちに行けば、うどんが湯気を立てていた。
いい感じの太麺に、綺麗な色をしたつゆが茶色い揚げに染み込んでいる。
…本当に美味しそう。ど定番だけどきつねで良かったかも。
零さないように慎重に席に持ち帰ってから2人して手を合わせる。
「いただきます。」
「いただきまーす!…ねえねえねえすずくん。これって卵を満月に見立ててるのかな?」
「多分そうだと思うけど…。」
「だとしたら素敵だねっ、確かに月みたい〜っ!」
隣に座っている沙月の方を向けば、すごく嬉しそうにお椀の中を覗いていた。
沙月のもとによそられたうどんも美味しそうで食欲をそそる。
だけどそれよりも、沙月はうどんの中の小さな月に夢中みたい。
そんなに月見うどんで喜ぶ人、なかなかいないだろうなあ。
彼女の姿を見ていつの間にか口元が綻んでいることに気づく。


